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このページでは,日本語の母音の無声化について,音響分析の方法を学びます。なお,母音の無声化とは何か,どのような条件下で無声化するかについては,「無声の補助記号、無声鼻音、母音の無声化」のページに解説があります。

日本語の母音の無声化

まず,以下のサンプルファイルをダウンロードしましょう。

ダウンロードしたら,まず音声を聞いてみて,どの母音が無声化していてどの母音が無声化していないか,耳で判断してみましょう。

次に,スペクトログラムを見て,無声化している箇所がスペクトログラム上でどうなっているか,観察してみましょう。

上では「キタ」(左)と「ケタ」(右)のスペクトログラムを示しています。「ケタ」の選択部分は [e] の母音区間で,フォルマントがはっきり観察されます。一方,左の「キタ」の「キ」には,このような母音の特徴が観察できません。「キタ」の「キ」は母音が無声化しているために,典型的な母音の特徴が観察できないのです。

両者の違いをさらに詳しくみるために,それぞれの第一音節を詳しくみてみましょう。まず下の図は,ズームインして「ケタ」の「ケ」の部分を表示させたものです。

この図における音声波形をみると,周期的な波形が観察されます。

次に,「キタ」の「キ」をズームインしてみましょう。

これをみると,先ほどの「ケ」のような周期的な波形が観察できません。周期的な波形が見られないということは,声帯が振動していない(つまり,無声である)ことを示しています。

次に,以下のファイルをダウンロードしてください。これは,「キタ」の第一音節を意図的に無声化させずに発音したものです。

先ほどのサンプルファイルとの違いを,スペクトログラム上で見てみましょう。

今度ははっきりと母音の特徴が観察できます。

本サイト内の関連ページ

音声学入門 > 調音音声学とIPA > 無声の補助記号、無声鼻音、母音の無声化

文献案内

Fujimoto, M. (2015). Vowel devoicing. In H. Kubozono (Ed.), Handbook of Japanese phonetics and phonology (pp.167-214). Berlin: De Gruyter Mouton. [Amazonリンク]

前川喜久雄 (1989) 「母音の無声化」杉藤美代子(編)『講座日本語と日本語教育 第2巻 日本語の音声と音韻(上)』明治書院. [Amazonリンク]