はじめに

PraatではSoundオブジェクトの長さを長くしたり短くしたりすることができます。ここで用いられているoverlap-addという手法では、ピッチはもとの音声のものがほぼ維持されます。一般的なスローモーションにありがちな遅くすると低くなる(反対に速くすると高くなる)ということは、ここではありません。

このコマンドは、音声の再生速度を変えるという目的でも利用することができます。長く引き伸ばせばゆっくりに聞こえ、短く縮めれば速く聞こえるからです。なお、これは実際には(音声はそのままで)再生速度を変えるのではなく、音声そのものを加工していることになります。Praatには、音声を加工せずに再生速度のみを変えるという機能はありません。

Lengthen (overlap-add)

方法は次の通りです。

まず、対象となるSoundオブジェクトを選択します。その上で、左にあらわれるコマンドのうち Convert を選択し、さらに

すると、以下の設定画面が現れます。ここで、何倍の長さにしたいかを Factor に入れます。例えば 2 とすれば、2倍の長さに引き伸ばされます。0.5 とすれば、半分の長さに縮められます。なお、Pitch floor と Pitch ceiling の設定は、もとの音声が通常のピッチのものであれば、特に変更する必要はありません。

こうすると、設定どおりに伸縮した新しい Soundオブジェクトが作成されます。このようにして加工した音声は、例えば音声知覚実験の刺激音として活用することができるでしょう。

再生速度の変更として活用する

音声知覚実験のためだけでなく、単純に音声の再生速度を変えて聞きたいというときのためにも、上述の機能を利用することができます(なお、音声はそのままで再生速度だけを変えるのではなく、音声そのものが加工されます)。長さを2倍にすれば速度が半分になったように聞こえ、長さを半分にすれば倍速になったように聞こえるはずです。

ただし、母音も子音も等しく長さが伸縮するため、極端に長くしたり短くすると、もともとの子音とは違ったように聞こえる可能性があることに注意が必要です。